それぞれの
オーダーの在り方

時にワガママになることも、
ファッションを愉しむための秘訣

体に合った服がほしい。唯一無二の服を着たい。自分の感性を服で表現したい…。オーダーの在り方は人によりさまざま。逆に、共通するのはそれぞれのワガママが投影されていること。そしてそれが叶うと、なにより愉しいということ。オーダーを経験したスタッフの表情を見れば、それはわかるはずです。

Photo / Takayuki Saito (BEAMS CREATIVE INC.)
Writing / Yasuhiro Takeishi (City Writes)

My Order Question & Answer

Question

  • 初めてオーダーしたのはいつ?
  • それはどんなアイテム?
  • オーダーならではの魅力は?
  • オーダーする時のマイルールは?
  • オーダーする時のインスピレーションの源は?

ビームス F

村瀬太郎の場合

村瀬太郎の場合

〈スティレ ラティーノ〉のブラウンダブルスーツに、クリームイエローのオーダーシャツとマダープリントタイで英国調を注入。「昔先輩に英国人は茶スーツを着ないと教わりましたが、このミックス感がいまどきかなと」。

Answer

  • 憶えているかぎりでは25歳頃。
  • 〈ファーラン&ハーヴィー〉のスーツ。
  • 回を重ねるごとに、納得のいく仕上がりになっていくことではないでしょうか。
  • コーディネートした絵が浮かぶこと。そもそもこんな合わせがしたい、という点からオーダーに至ることが多いんです。
  • 特定のものはありません。

「初めてのオーダー体験は、英国サヴィル・ロウのビスポークテーラー〈ファーラン&ハーヴィー〉。“ BeSpoke(会話する)”の流儀に従って話し込みたかったのですが、緊張してほとんど話せませんでした。つたない英語でも身振り手振りを交えてもっとコミュニケーションしておけばといまでは思いますが、それもいい思い出です。
そう、私にとってオーダーは“ Fun!(愉しみ)”。この一言に尽きます。自分のイメージがカタチになる。それは他ではなかなか味わえない経験であり、とても愉しいこと。オーダーは既製服の不足を補うものではありますが、私にとってはワードローブの一部であり、特別な服という意識はありません。ですが、自分が思い描いたイメージが具現化される過程は、オーダーならではの特別な経験なのです。お客様にもそのワクワクを経験していただきたいですし、そのお手伝いができればと思います」

クリームカラーのシャツが着たくて〈マリア サンタンジェロ〉にオーダーしたというシャツ。英国ムードで着るイメージが浮かんでいたため、あえて硬めの襟芯を指定して、英国らしく襟元が端正に見えるように狙ったそう。

クリームカラーのシャツが着たくて〈マリア サンタンジェロ〉にオーダーしたというシャツ。英国ムードで着るイメージが浮かんでいたため、あえて硬めの襟芯を指定して、英国らしく襟元が端正に見えるように狙ったそう。

ビームスF 新宿 サービスマスター

伊藤昌輝の場合

伊藤昌輝の場合

Answer

  • 20年ほど前です。
  • 憧れだった〈アットリーニ〉のジャケットです。
  • 自分の好きな生地を選べるから。
  • 長く着たいので、頑丈でコシがある英国生地で作るようにしています。またシングルジャケットの場合は、自身が好きなスタイルなので、Vゾーンを高くしてもらっています。
  • 映画やアガサ・クリスティー原作の英国のTVドラマなどをオーダーする際の参考にしています。

「なんとなくですが、私はコーディネートにいつもテーマ性をもたせるようにしてきました。その点、自分自身で生地や型を選べるオーダーを始めてからは、よりテーマ性を追求できるようになったと感じています。そういった表現したいテーマや自身が目指すスタイルをイメージしながら、担当スタッフと話し合って生地を選んだりするのはとても愉しいんです。そんなオーダーは思い描くテーマやスタイルを実現してくれるばかりか、その結果として大きな達成感を抱かせてくれる。そして、私自身をも満たしてくれる存在なのです」

クラシックに見えるようにVゾーンを高く設定してもらった〈ダルクオーレ〉のオーダースーツ。生地は雑誌で見た白洲次郎のスーツを意識して、ポーター&ハーディング社のツイードを選択。テーマはずばり英国カントリー。

クラシックに見えるようにVゾーンを高く設定してもらった〈ダルクオーレ〉のオーダースーツ。生地は雑誌で見た白洲次郎のスーツを意識して、ポーター&ハーディング社のツイードを選択。テーマはずばり英国カントリー。

ビームス ハウス 名古屋 ショップマネージャー

森 正博の場合

森 正博の場合

Answer

  • 確か2007年だと思います。
  • スーツです。
  • 生地から選べて、自分だけの一着が出来上がるところ。しかもその時々の気分を反映させ、用途に応じたデザインにできるのが最大の魅力です。
  • 正確にはオーダー後ですが、破れるまで着る(笑)。
  • インスピレーションよりも、この仕事をしている以上、最高峰のものを着たいという思いから始まります。そのためにも経験豊富なスタッフに相談しています。

「自分だけの一着を手に入れる喜び。月並みですが、オーダーを経験してから、そこにとても幸せを感じました。そしてあらためて、ファッションにはさまざまな“入り口”があることに気づかされたんです。用意された枠組みのなかで生地や付属品、ディテールのデザインなどを好みに応じて選び抜き、自分の理想を叶えていく。それはファッションのなかでも、私にとっては至福の選択です。オーダーした服を身に着けると、やはり気分が上がります。そこにはけっして変わらない、自分の嗜好と感性が凝縮しているからです」

一時期は毎シーズンオーダーし、財布がすっからかんだった(笑)という〈ダルクオーレ〉のジャケット。三つボタン中ひとつ掛け、パッチポケットの最もオーソドックスな仕様。末長く着られるよう普遍性を重視したそう。

一時期は毎シーズンオーダーし、財布がすっからかんだった(笑)という〈ダルクオーレ〉のジャケット。三つボタン中ひとつ掛け、パッチポケットの最もオーソドックスな仕様。末長く着られるよう普遍性を重視したそう。

ビームス 福岡

星野貞晴の場合

星野貞晴の場合

Answer

  • ビームス入社4ヶ月後の約5年前。ドレス担当になったのがきっかけで。
  • スーツです。
  • 人それぞれの体型に合ったものができること。自分は身長が高く痩せ型なので、既製品のスーツでは上下でサイズの差が出てしまうんです。
  • 時代性を考慮し、ジャケットはやや小さく、パンツはやや大きめに設定します。
  • 既製品や生地見本を鑑みつつも、気分を大切にするようにしています。

「採寸し、生地や付属品を決め、ディテールを選定する。オーダーの一連の作業を経験することで、テーラードウェアの作りへの興味が深まりました。結果、お客様に補整箇所まで考慮してご提案させていただけるようになるなど、服への造詣もより深まったと思います。いずれにしろ、私のようにサイズでお悩みの方にはぜひお試しいただきたいですね。既製品で気になっていた箇所が、ほとんど気にならなくなりますから。そこにはこの世に一着しかない自分サイズを纏える醍醐味と、愉しさがある。それは最高の贅沢だと思います」

〈カスタムテーラー ビームス〉でオーダーした、ウィンターモヘア使用のスーツ。チェンジポケット付きのダブルブレストでクラシックな雰囲気に合わせ、パンツも裾幅22cmでややワイドなシルエットに変更したとのこと。

〈カスタムテーラー ビームス〉でオーダーした、ウィンターモヘア使用のスーツ。チェンジポケット付きのダブルブレストでクラシックな雰囲気に合わせ、パンツも裾幅22cmでややワイドなシルエットに変更したとのこと。

ビームス 高松 ショップマネージャー

氏家 健の場合

氏家 健の場合

Answer

  • 2017年。それまでは既製服ばかりでしたが、高松にもっとオーダーの文化を広めたいという思いから、まずは自分で試してみることにしました。
  • 今回着用したスーツです。
  • 微妙なサイズ感まで調整できること。またありそうでないものも作れること。
  • 生地と型は、ありそうで意外とない組み合わせをいつも意識しています。
  • その時々のトレンドをほどよく採り入れるくらいで、特別なものはありません。

「オーダーを経験してまだ日が浅いですが、ファッションに対する考え方がかなり変わったと感じています。サイズスペックに対する理解度が上がったことは当然ですが、既製服の見方も変わったのが大きい。自画自賛になりますが、ビームスの既製服がいかによく作られ、コストパフォーマンスにも優れているか、あらためて思い知らされました。また、自身の体型とも向き合えるよい機会となりました。そうした勉強になった一方で、オーダーならではの愉しさも知れたので、お客様にもどんどんおすすめしていきたいですね」

2年前にオーダーした〈カスタムテーラー ビームス〉のスーツは、英国製の生地をチョイス。パンツもサイドアジャスター仕様に指定し、ブリティッシュテイストに仕上げるも、苦手というチェンジポケットはあえて省略。

2年前にオーダーした〈カスタムテーラー ビームス〉のスーツは、英国製の生地をチョイス。パンツもサイドアジャスター仕様に指定し、ブリティッシュテイストに仕上げるも、苦手というチェンジポケットはあえて省略。

ビームス ハウス 丸の内

齋藤龍治の場合

齋藤龍治の場合

Answer

  • 2007年。以来、頻繁に利用するように。
  • トーマス フィッシャー社のブラックウォッチ生地で仕立てたシングルジャケット。
  • 仕上がりまでの時間と期待感。初めて袖を通す時の高揚感など。
  • ディテールや仕上がりのイメージは伝えますが、基本的にはサルトのハウススタイルにお任せ。多少のサイズ感のズレも気にしません(笑)。そこに人の温もりを感じるので、ひっくるめて愉しみます。
  • 強いて挙げれば、一番重要と思う生地。

「オーダーしてから仕上がるまでの、期待と不安が入り交じった時間。そして、完成品に初めて袖を通す時の、なんとも言えない高揚感。オーダーには服そのものだけではない、こうした精神的な魅力も感じます。サルトを交えたオーダー会の、独特の空気感なども好きなんです。いつの間にかクローゼットは既製品よりオーダー品の方が多くなってしまいましたが、傾倒しすぎないように気をつけています。でも、着込むほど味わいが増すような生地を選び、ベーシックを心掛けているので、オーダー品はずっと着続けたいですね」

ビームスの中でも、随一のオーダー数を誇るほど惚れ込む〈ダルクオーレ〉のジャケット。ジーロアペルトという肩が落ちて見える手縫いの袖付けや低く設定したゴージライン、胸のパッチポケットなどディテール満載。

ビームスの中でも、随一のオーダー数を誇るほど惚れ込む〈ダルクオーレ〉のジャケット。ジーロアペルトという肩が落ちて見える手縫いの袖付けや低く設定したゴージライン、胸のパッチポケットなどディテール満載。

ビームス 二子玉川 サービスマスター

斉藤智也の場合

斉藤智也の場合

Answer

  • 2011年頃です。
  • 〈コルノ ブルゥ〉にドレスシューズをオーダーしました。
  • 既製品にはない自分だけのものが得られることでしょうか。
  • 特別なルールはありません。急に作りたい!と思うこともしばしばです。
  • 特にマイルールはありません。生地を見て直感で!(笑)。だから、完成品が上がってきたときに、意外な発見があることも多いんです。

「オーダーによって自分だけのもの、体に合っていて誰ともかぶらない、この世で一着の服が手に入ることは、やっぱりテンションが上がります。仕上がりを待つのも愉しいですが、まず生地を決め、それに合う裏地やボタン、ディテールなど無数の組み合わせを考える。その時間もまた愉しいんです。そんなオーダーはいわば自分の思いをカタチにしたものですが、完成品を目の当たりにすると“こうなるんだ!”という意外な発見もある。そういった意味では失敗と思ったことはないですし、すべてオーダーしてよかったと思えますね」

〈ダルクオーレ〉のオーダージャケットは、個性を演出すべくピークトラペルの角度をやや鋭くしてもらったそう。カラーネップの豊かな表情が気に入ったブラウンの生地を選択。ボルドーのストライプシャツでシックに。

〈ダルクオーレ〉のオーダージャケットは、個性を演出すべくピークトラペルの角度をやや鋭くしてもらったそう。カラーネップの豊かな表情が気に入ったブラウンの生地を選択。ボルドーのストライプシャツでシックに。

ビームスEX 横浜

伊井優一朗の場合

伊井優一朗の場合

上衣は既製品展開がないサイズ40の着丈と袖丈を調整し、下衣は44で注文した〈スティレ ラティーノ〉のスーツ。オーダーならではのサイズバランスです。

Answer

  • 3年前の秋冬シーズン。
  • 〈スティレ ラティーノ〉のネイビースーツ。長く着られるよう、ベーシックでオールシーズン対応の生地を選びました。
  • やはり自分の体型に合ったものが着られることだと思います。
  • なんでもオーダーできるからといって、けっして奇をてらわないことです。
  • 先輩の着こなしや経験談は参考にさせてもらっています。個性豊かで経験豊富な先輩が多いので。

「オーダーはまだまだ勉強中ですが、“自分仕様”という特別感は他に代え難いものがあります。自ら決めた生地やディテールが服となり、それを初めて羽織るときの高揚感はやはりたまりません。オーダーによって自分の体型のクセを知ることができ、既製品を選ぶ際も体型に合うかどうかが明確に見分けられるようにもなりました。ボタンやステッチなどディテールへの関心も高まるなど、影響は大きいですね」

ビームス 銀座

梶 亮太の場合

梶 亮太の場合

グレンプレイドの生地で仕立てた〈カスタムテーラー ビームス〉のスリーピースは、先輩のアドバイスに従い、英国調に合わせたチェンジポケットを追加。

Answer

  • 入社1年目の夏。
  • 〈カスタムテーラー ビームス〉のグレンプレイドスリーピース。
  • 体型に合わせられるのはもちろん、既製品にはない生地、ディテールをチョイスできる点です。
  • オーダーならではの生地やディテールを選ぶことです。自分が考える“ほしい”要素を詰め込むようにしています。
  • 洋書や映画、各界著名人の着こなしを参考にすることが多いです。

「服好きなら、誰もが一度は“こんな服がほしい”とイメージしますよね。オーダー最大の魅力は、そんなイメージをカタチにする愉しさだと思います。体型のコンプレックスもカバーできるので、オーダーを知ってからシルエットが合わないことを理由に断念する服も減りました。そしてほしいディテールや生地が既製品で見つからなかった場合にオーダーすることも増えました。そう、オーダーは服の選択肢を広げてくれたんです」

ビームス 六本木ヒルズ

上原謙介の場合

上原謙介の場合

〈スティレ ラティーノ〉のスリーピースは、ナポリらしいやわらかな仕立ての雰囲気を壊さない生地を選択。スタイルはブランドのおすすめが基本だそう。

Answer

  • カジュアルからドレス部門に異動した直後の2007年。以来、スーツとシャツは常にオーダーです。
  • 〈リングヂャケット〉のスーツ。それ以降、数回オーダーしました。
  • 既製品が合わなくても、理想の着用イメージに近づけられる点です。
  • 仕上がり後にお直しで微調整し、完成度を高めるようにしています。
  • 生地を見てからディテールやシルエットをイメージしていく場合が大半です。

「細い体型がずっとコンプレックスで既製品は憧れるだけでしたが、その長年のコンプレックスを打ち消してくれたのがオーダーです。そんな私にとってオーダーは、自分を等身大で表現できる唯一の服とも言えます。それにも増して愉しく感じるのは、スタッフと話し合いながら生地やディテール、付属類などを決めていく時間。私の場合は形よりも生地から決めるので、店頭に新しいオーダーの生地が届いた時などは本当にワクワクしますね」

ビームス ハウス 神戸 サービスマスター

麻生知宏の場合

麻生知宏の場合

ほとんど見かけないミントグリーンの生地に惹かれ、〈マリア サンタンジェロ〉にオーダーしたシャツ。面長な顔に合うようにセミワイドカラーを選択。

Answer

  • 入社3年目、もう17年も前です。
  • 〈リングヂャケット〉のフルオーダースーツです。
  • 生地選び、仮縫いなど一着が出来上がるまでのプロセスを愉しむこと。
  • 他の人が選ばない生地のセレクトをすることと、私自身がひどい肩こりのため、肩回りをなるべくサイジングでストレスフリーにさせることです。
  • 特になし。直感に従って、その時の気分を大切にするようにしています(笑)。

「イタリアのサルトが仕立てるオーダー服には、技術力の高さからくる素晴らしい着用感や、なんともいえない独特の雰囲気があります。そんな“本物”のよさを体感的にも視覚的にも感じ取れたことは、私にとても素晴らしい影響を与えてくれました。また気分に合った生地やディテールが既製品にない場合にオーダーすることが多いのですが、そういった意味では、オーダーはその時々の気分を満たすツールでもありますね」

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